年齢 | 40歳 |
---|---|
移住時期 | 2021年 |
居住エリア | 若宮地区 |
市原市には学校という環境に馴染めない子どもたちが自分らしく過ごせる特別な場所があります。ウエルキャンは、市内で市民活動に取り組む仲間たちが集まる団体『特定非営利活動法人いちはら市民活動協議会』が運営する子どもたちのための居場所です。
ウエルキャンの会場である、「ウエルシア・コミュニケーションセンターいちはら(ウエルコミ)」ではもともと、毎週金曜日に子どもの居場所事業を行なっていました。2023年度からは、公益財団法人日本財団「子ども第三の居場所」助成を受け「ウエルキャン」として新たなスタートを切り、様々な家庭環境の子どもたちに対応できるよう体制がつくられてきました。
ウエルキャンは、毎週3日間(水・木・金曜日)11時から17時まで実施し、子どもたちの安心できる居場所として機能しています。また、保護者や市民団体などと連携し、様々なイベントを企画・実施しています。
居場所の見つからない子どもたちのための居場所として始めたウエルキャンに、「最初は利用者として関わっていました」と語るのは、現在スタッフとして活動する町田さん。「当事者にしかわからない部分がある」という思いから、スタッフとして参加するようになりました。現在は8名のスタッフがお互いの得意不得意を補い合いながら和やかに運営をしています。
「私が感じることですが、不登校というと、腫れ物扱いというか『何か困難がある子』とされてしまいます。でも実際、ここを利用する子どもたちはのびのびと過ごしているんです」と町田さんは語ります。
ウエルキャンには、学校という水槽が合わなく、自分の居場所を探している親子が集まります。そんな親子を出迎えるウエルキャンスタッフは、“ありのままを大切にする”をモットーに、居場所が見つからない子どもが、自分の気持ちを整理できる空間を提供しています。
「元気そうに見えても、中身はとても波立っていることもある。そんな子どものために、まずはそこに居られるということが大切なんです」と一人ひとりが自身のペースを掴むまで保護者と共に温かく見守り続けます。
ウエルキャンは、フリースクールとは異なる独自の「居場所」です。スタッフや地域の方々との自然なコミュニケーションが生まれるだけでなく、時には子ども同士でケンカになることもあるそう。しかし、そうした経験も含めて「社会の縮図がここに生まれている」と町田さんは捉えています。
2025年春現在、市原市内を中心に16名の子どもたちが利用登録をしており、そのうち9名が定期的に利用しているとのこと。最初は、ウエルコミへ上がる階段を登ることすらできなかった子どももいるといいます。町田さん自身のお子さんも利用者の一人で、「最初は利用者に声をかけられるだけで涙が出てしまっていたんですけど、『行きたくない』とは言わないんです」と振り返ります。
午前中は学校に行かない子どもたちが利用し、夕方になると学校帰りの子どもたちが遊びに来ます。興味深いのは、午前中に利用していた学校へ行き渋っている子どもも、放課後に遊びに来た子どもたちと一緒に遊んでいることがあるのだそう。学校へ行く行かないに関わらず、ウエルキャンというフラットな場所は、様々な状況の子どもたちが自然に交わる場となっています。
「オープンな空間だからこそ、スタッフは子どもの様子が見ていられるし、子どもも大人が仕事をしている姿がすぐそばで見られることは大きな財産になっている」と町田さんはいいます。基本は自由にさせているけれど、何かあった時に「助けて」と言える大人がそばにいること、それぞれが抱えているものがあったとしても、ここにいる大人が常に笑顔でいてくれることが安心できる居場所づくりの秘訣なのかもしれません。
ウエルキャンの特徴は、子どもたちの行動をなるべく否定しないことです。「子どもは球体で、見方によってどうとでも捉えることができる」という考えのもと、やりたいことはとことんやらせ、見守る体制を整えています。
お試し行動をとる子どもも多く見受けられるそうですが、良くないことをした時には「ダメ!」ではなく、「なんで?」と問いかけます。「なんで?と聞かれるとは思っていなかった子どもは、怒られないことに呆気に取られています」と町田さんは微笑みます。
「自分から見えるその相手が全てではなく、こういう一面もある、こう考えるとこう見える、と大枠で見ていくことで楽に物事を考えられる」というのが町田さんの哲学です。こう考えられるようになるまでには、思い返しても辛くなるような町田さん自身の経験や、ウエルキャンへの様々な意見があるからこそ辿り着いたものだといいます。
「ウエルコミはあくまでも一時的な居場所。自分が安心できる場所としてこの場所(ウエルキャン)が確保されていることで、学校に戻ってみたり、フリースクールで学びに行ってみたり。みんながそれぞれ次の居場所を求めて巣立っていきます。でも、ふとしたときに戻って来てくれるんです」と語ります。
ウエルキャンを利用する子どもたちは、各々が思い思いに時間を過ごす中で、徐々に「遊んでみよう」「やってみよう」「話しかけてみよう」という気持ちが芽生え、「ありがとう」という言葉を口にしたり、言葉は出ずとも感謝の気持ちを行動で表したりするようになります。
「こういう循環で子どもたちのスパイラルが上がっていく」と町田さんは実感しているといいます。こうして少しずつ変化が生まれてくると、次のステップを求めて「自分たちには何が合うのか」を家庭で話し合い、巣立っていくといいます。
自分の居場所を見つけた子どもたちが再びウエルキャンに戻ってきた時、今度は同じように悩んでいる人を助ける側になるという好循環が生まれているのだそうです。
10年前に出産を経験した町田さんは、最近の出産一時金や保育料に関する制度の拡充に驚いたといいます。また、待機児童がゼロであることや車を出せば道は広くて大きな施設が多数あり、赤ちゃん連れでも出かけやすいという点も、子育て真っ最中のお母さんならではの市原市の魅力です。
さらに、発達に不安を持ったお子さんの健診等に関するサポートも充実しています。「子どもの成長について不安があった時、市原市への相談が一番しやすかった」と町田さんは語ります。親身になって話を聞いてもらったり、適切な機関へと繋げてもらったりと、手厚いサポートに助けられたそうです。
ウエルキャンのような温かいコミュニティがあることや、子育てのしやすさは移住を考える子育て世代にとっての魅力であり、安心して暮らせる環境が整っているといえるのではないでしょうか。