

子どもたちの元気な声が響く道場。
この日は五井公民館にて、日本空手道忍仁会の稽古がありました。
「日本空手道忍仁会」は2022年9月に開講しました。
不登校や行き渋り・発達障害で悩む子どもも広く受け入れ、「“居場所” としての空手道場」として信頼を集めています。
現在は会員数80人を超え、市原市と千葉市でさまざまなコースを展開しています。

この日の稽古は、昇級試験の賞状を渡すところから始まりました。
「昇級おめでとう! がんばったね」と、佐藤さんは満面の笑みで賞状を手渡します。
「子どもたちの成長を見守るのが楽しいです。本人の中で何かを乗り越えた瞬間を見られたとき、自分も生きがいを感じます」と語ってくれました。

佐藤さんの道場には、学校に行きにくさを感じている子も多く通っているそうです。
中には、発達障害を理由に他の習い事教室を断られたという経験がある子も。
しかし稽古の場では、みんな一生懸命に声をだして真剣に空手と向き合っていました。
「最初は声が出せない子もいますし、グネグネ動いちゃう子もいます。でもみるみるうちにビシっときをつけができるようになって、技を覚えていくんです」と、佐藤さんは嬉しそうに話してくれます。
みんなには、そういう小さな成功体験を積んでいってもらいたい。自己肯定感を高めることで、チャレンジ精神を養ってほしいです」

真剣に、でも楽しく。
空手と真摯に向き合う佐藤さんの背中を、子どもたちはまた真剣に追っていきます。
「空手を辞めたいと思ったことはない」と断言する佐藤さん。
佐藤さんの空手人生の歩みを伺いました。
「実は、僕自身が小学校のときにいじめられて不登校を経験しています。そこで親に連れていかれたのが、たまたま秋田で一番強くて厳しい空手道場でした」と、佐藤さんは笑います。
「当時『ミニ四駆を買ってやるからついてこい』と言われ、気が付いたら道場だったんです。道場は厳しかったけど、不器用でも一生懸命にやっていたら意地悪してくる人は誰もいなかった。気づいたら、道場が自分の居場所になっていました」
学校には行けなくても、道場には行けた。
その原体験が、今の佐藤さんの道場のスタイルに繋がっているそうです。

「中学では、自分以外みんな黒帯というような環境で戦っていた。最初は全然勝てなかったです」と佐藤さんは話してくれました。
中学時代、毎日野球部の練習のあとに道場で空手を練習していたそうです。
「野球と空手の練習がどこかで繋がったのか、あるときふっと勝てるようになりました。そのまま勝ち進んで、黒帯でない奴が県大会・東北大会で優勝したのは史上初でした」

大学の4年間は、名門の東洋大学で厳しい寮生活を送ったそう。
「練習だけでなく、精神的にもとても厳しい日々でした。でも、トップリーグの日本最強レベルのところで4年間を過ごせたのは、とても幸せなことでした」と語ります。
大学卒業後は、実業団に入り空手教室で子どもたちに空手を教えていた佐藤さん。
3人兄弟の一番上という佐藤さんは、小さい子とわちゃわちゃ楽しむのも大好きだそうです。

「アキレス腱断裂を経験したこともあるんですけど、教室の生徒に迷惑をかけたくなくて、退院したその足で稽古に行きました。松葉杖姿を見た保護者さんに驚かれました」
生徒たちへの愛があふれる佐藤さんらしいエピソードです。
秋田から上京後、日本全国いろいろな場所を生活拠点にしていた佐藤さんに、市原の魅力を伺いました。
「ちょうど良いなあと思います。道路は広くて開放感あるし、インターや空港にもアクセスが良いから遠出もしやすい。自然を感じることもできるので、休みの日にドライブでリフレッシュをしに行くこともあります」
「市原はお祭り好きな人が多い気がします」とも話してくれました。
「いろいろな公園で、駅前で、子育て支援センターで、その日によっていろいろなイベントをやっている。みんなで盛り上げていこう、楽しいことをしよう、と集まる雰囲気は、秋田出身の自分からするととても驚きでした」

また、移住者ならではのこんな視点も。
「住んでみて驚いたのは、燃えるゴミを週3回も回収してくれるところです。空き缶や段ボール、プラスチックの回収スポットもあちこちの商業施設にある。僕自身忘れっぽいのですが、出し忘れてもなんとかなるので助かってます」
当たり前の日常を支える小さな点にも、市原の住みやすさが詰まっているようです。
会員数が80名を超え、積極的に体験教室やイベント参加を行っている忍仁会。
佐藤さんに、道場のこれからの目標を伺いました。
「うちの道場には、まだ黒帯の子はいません。なので黒帯の生徒を育てて、大会に出すというのが目の前の目標ですね」

「でも、そこが決して目的になってはいけない」とも語ってくれました。
「地域に溶け込んで、地域の人に認められるような居場所になりたいなぁと思います。学校に行きづらい子や障害を持っている子がいたときに、『こういう道場があるんだよ』って言ってもらえるようになりたいです」
佐藤さん自身の経験と信念から生まれた道場。
日本空手道忍仁会は、安心できる “居場所” のひとつとして存在しています。