


「お絵描きサポーターって名乗ってはいるけど、できることならなんでもやっていきたいんです」
市原市内のイベントなどに出店し、ワークショップや自身の作品の販売を行うあべあやかさん。
子どもたちと一緒にアートを楽しむ姿と同じように、この日も明るい笑顔で話してくれました。
チョークアートで小湊鐡道の車窓に絵を描く。
五井大市でアートストリートを展開する。
そういった大きなものから、手作りのキーホルダーを持ち歩くといったことまで、あべさんのアート活動は多岐に渡ります。

「アートというと難しいものだと考えられがちだけど、私にとってはすごく身近なものなんです。曖昧なものにどう価値をつけていくか。それが私の人生の課題です」
「自分にはアートは無理」と思っている人に、「アートって身近で楽しいものなんだ」と気づいてもらう。
それが、「お絵描きサポーター」としてのあべさんの生き方になっているようです。
あべさんは、特に子どもたちに向けてのワークショップを精力的に行っています。
子どもたちを巻き込むその原動力を伺いました。
「絵は、言葉がいらないコミュニケーションなんです。それを教えてくれたのは、ある女の子でした」
保育士とヘルパーの資格を持ち、障害児分野の加配保育士として働いていたあべさん。
ある日、「アンパンマンを描いてほしい」と言われて描いてみたら、大泣きをされてしまったそうです。
「私は、美術の成績なんてずっと1でした。私が描いたアンパンマンは下手くそすぎて、『こんなのアンパンマンじゃなーい!』ってその子はパニックになってしまったんですね」
そこから、アンパンマンを練習し始めたというあべさん。
絵はパーツと配置が命!「特徴を掴むこと」が最も上手く見えるコツだと言います。
なぜキャラクターがそのキャラクターに見えるのか、その理由をじっくり観察する。目と目はどのくらい離れているのか、口と目の距離は…。アンパンマンやキティちゃんといった、シンプルな絵ほどその特徴を掴むことは難しいそう。
「その子はお友達と言葉でのコミュニケーションが苦手だったけれど、アンパンマンを描くということを通して、私とおしゃべりをしてくれるようになった。そのうちにアンパンマン以外も描くようになって、周りの子とも馴染めるようになったんです」
あべさんは20年経ったいまも、その女の子とは手紙のやりとりもしているそうです。
「その子がきっかけで、周りの先生や子どもたちから頼まれることも増えました。仲良くなるきっかけになるんですね。絵ってすごい力を持っているんだなぁと思いました」
あべさんはアンパンマンを通して、絵の基本だけでなく、子どもたちとの向き合い方も学んだと語ります。
「絵を描き始めると、子どもたちそれぞれの性格が見えてくる。座り方や悩み方、全部がその子の世界観を作っていて、それを感じるのが楽しいです。一緒にその世界を共有させてもらえるのがめちゃくちゃ刺激になるから、やめられないですね」
依頼によっては、あべさんは場所を提供するだけ、という場合もあるのだそう。
「その子の表現を手伝うことすらいらず、寄り添ってあげる。それが必要とされていたら、そうするのが良いと思っています」

あべさんは、市原市のさまざまな地域活動に携わっています。
そのひとつが、子ども食堂の手伝いです。
「社会と繋がっていたい、と思いました。最初は、2歳の子どもを連れて調理の手伝いもしていました」
妊娠・出産でシッターの仕事を辞めたあとも、チョークアートの講師資格を取得し、抱っこひもで子どもを抱えながら教室を運営していたというあべさん。
しかし、子どもが熱を出して手伝いができない・納期を遅らせてもらう必要が出てくるなど、「周りの人に迷惑をかけてしまう」と思ったこともあったそうです。
「でも、ママが謝りながらイベントに参加するのは違うなーって思いました。ママのやりたいを応援したい。その気持ちで、イベントを主催している人を紹介したり探したりしています」

「日曜日の学校」の立ち上げから、「若宮マルシェ」や高齢者施設での年賀状作り……。
ボディペイントやTシャツづくりなど、上手い・下手が目立たない対話的なアートをあべさんは模索しています。

「アートでコミュニケーションを取ることが大切だと思っています。認め合いやすいアートを提供していきたい」とあべさんは語ります。
行動心理学なども学び、対話型アート鑑賞というワークも広めているあべさん。
「悔しさを感じたこともあるけれど、辛いと思ったことはありません」と、笑って話してくれました。

「こういった活動を他の地域でやってと言われたら、できないかも」とあべさんは話します。
「市原ってイベントがたくさんありますよね。活動している人や場所がたくさんある。ママさんも、外にむかっていこうとする人が多いように思います」
他の市の人たちに、「市原ってイベントいっぱいやっているからいいね」と言われることもあるそう。
「都内だったら、駅から徒歩4分と書いてあったら足が遠のくかもしれない。でも、市原の人は車を持っている人も多く、距離はほとんど問題になりません。それも市原の人たちの強みだと思います」
市原市では、いろいろな媒体でイベントの情報を発信しています。
マルシェも主催者によってさまざまな色があるし、あべさんはイベントをはしごして楽しむこともあるそうです。


「市原の人って、個性が強いと思います。それぞれ特色があって、勉強させてもらえる人が多い。いろいろな業種の人たちが関わりあっていて、それがうまく繋がっている街だと思います」
市原に住む個性あふれる人たちは、ママとしての学びやアーティストとしての学びにも繋がるそうです。
「子供を言い訳にしたくないと思って活動しているけど、子供が繋いでくれる縁もあります。子育ての悩みも喜びも、市原でそれを共有できるのがいい。そういう市原のそういうところが好きです」と、あべさんは語ってくれました。
あべさんに、これからの目標を聞きました。
「ママ友がほしいです!笑」
そう答えてくれたあべさんの繋がりや友人は、「ママ」としてではなく、自分のやりたい事をがむしゃらに楽しみ、進んできた中で繋がる縁ばかりでした。そこで広がる関係に「ママ友」というくくりの友達がいないことに気づいたあべさん。
「私が何者か知らない人と公園に行ったりしたい。悩んでそうなママに声をかけて、お話とかしてみたいですね。」
と語ってくれました。
また、「大事なことは、居場所になることだと思っています」とも話してくれました。
「子どもって、親ではなく他人になら話せる、というようなこともあると思っています。『なんかどこでもいるな、こいつ。よくわからないけど一緒に遊んでくれるな』そういう奴になりたいです」
“お絵描きサポーター” のあべさんですが、あべさんの活動はお絵描きにとどまりません。
「ツールはなんでもいい。私が持ちうるものを生かしてやっていきたいと思っています。“変な人” でいい。何でも屋っていわれるのが嬉しい。それがだれかに刺さってくれれば、もっと嬉しいです」
温かくて優しいアートの世界。
あべさんの手によって生み出される境界線のない素敵な世界が、これからも楽しみです。

あべさんお気入りの場所
湖畔美術館/行き詰まった時に刺激をもらえる場所。
青柳公園/何もない公園だけど、頭の整理などができる大好きな場所。
