
| 出身 | 大阪 |
|---|---|
| 居住エリア | 市原市内 |
| お気に入りの場所 | タイのサムイ島 |


高木さんが初めてタイを訪れたのは20歳のときです。
「誰も知らない場所に行きたかった」という思いから友人と選んだ旅先が、サムイ島でした。
当時、サムイ島はタイの観光地としてスポットが当てられ始めて間もない島で、高木さんたちが訪れた時も、自分たちの他に日本人観光客を見かけることはなかったと言います。
タイという未知の国の未知の島の住人から向けられる何気ない視線でさえも、「大きな目で見られている気がして怖かった」と振り返ります。
右も左も分からないローカルな島。バカンスのはずが「もういや〜!」と泣きそうになりながら過ごしていたそうです。そんな時、宿泊中のホテルの中で不意に声をかけられました。
「どこから来たんですか?」
それは聞き馴染みのある日本語。声をかけてくれたのは、ホテルの従業員である日本人女性でした。
こんなところに日本人がいる!と安心した高木さんに、その日本人女性は周辺のおすすめスポットや美味しい食べ物をたくさん教えてくれて、実際に案内までしてくれたそうです。そして一緒に働くタイ人のスタッフとの交流の架け橋にまでなってくれました。

最初は怖いと感じていたタイ人も、話してみたらすごく優しくて、思いやりがあり、親しみやすい。
怖いと決めつけて心を閉ざしそうになっていた高木さんでしたが、この出来事をきっかけに、タイの人たちと一気に心の距離が縮まりました。
残りの滞在期間で更に交流を深め、高木さんはタイとタイの人々に魅了され、帰国の頃にはすっかり怖さは消え、タイは特別な場所になっていたといいます。

サムイ島は、今でも「一番好きで、思い出深い場所」だそうです。
その後も何度も同じスタッフに会いに足を運び、サムイ島だけではなく、タイの北部チェンマイにまで足を伸ばし、六つ年の離れた妹さんを巻き込んでたくさんの場所を訪れたと言います。




タイに行くたび、タイへの想いは深まっていきました。妹さんも、いつしかタイに夢中になっていったと言います。
当時の高木さんは、とにかくタイに行きたくてお給料のほとんどを旅費に使っていたそうです。
思い立ったら即行動。今はタイのことしか考えられない、そんな時期でした。
そんなある日、妹さんにタイ語学校の体験に行ってみないかと誘われました。
これまでの旅行では、コミュニケーションは身振り手振りでどうにかなっていたと思っていたし、指差しタイ語ブックでいくつか単語を覚えてはいたものの、語学への関心はそこまで深くなかった高木さんは、最初は語学学校も乗り気ではなかったそうです。
「語学学校にお金を費やすなら、全部旅行に注ぎ込みたかった」と当時を振り返り笑いますが、いざ始めてみると、その楽しさに夢中になっていきました。
「単語は旅行の度に少しずつ覚えて、少し理解していたけど、文法を知った瞬間に『あ、楽しい』って思いました。簡単なことでも一つ分かるのが嬉しくて」
2年ほど学び続けることで、娯楽として楽しんでいただけのタイを、よりもっと深く知り、相手のことを理解し、自分の気持ちをその国の言葉で伝えることができる言葉というツールがどれほど大事か実感していったと言います。
その後結婚し、子供を授かった高木さんは、家族で大阪を出て市原市へ住むことになりました。
市原に住み始めてからも、常にタイへのアンテナを張り巡らせながら過ごしていた高木さんは、偶然通りかかった、当時白金にあったタイ料理店「プラトーン」の存在を知ります。
あ!と思った瞬間車を停め、店に入っていました。
思い切ってタイ人の店員さんに「タイが好きなんです」と話しかけると、返ってきたのは思いがけない言葉でした。
「バイトしてみる?」
高木さんがそのとき声をかけたのは、プラトーンのオーナーさんだったのです。
そんな縁で、とんとん拍子にプラトーンでのアルバイトが決まった高木さん。タイとの関わりをずっと探していた高木さんにとって、またとない嬉しい声掛けをいただいて働き始めたプラトーン。日本語が話せるスタッフばかりで、タイ語を学んでいたとはいえ、まだ完全に自分のものにはできていなかったという高木さんは、スタッフの日本語に助けられつつ働いていましたが、同時に不甲斐なさも感じていたと言います。
せめて、自分にできることを…と、日本語の得意ではない厨房スタッフさんにはタイ語を使ったコミュニケーションに挑戦したり、進んでオーダーを取りに行くこともしました。
タイの食材を多く取り扱うこともあり、お客さんのほとんどがタイ人なので、お店の接客も積極的にタイ語で会話を試みることを努力したと言います。

その後、一旦他の仕事をしながらタイ古式マッサージの資格取得など、市原市や市外でさまざまな挑戦をしました。
タイ古式マッサージの資格を市原市で取得したことも、その挑戦の一つです。この資格取得によって新たな縁も生まれました。
千葉市椿森コムナの立ち上げに関わった方から、「タイ古式マッサージの店を出店してみないか」と勧められたのです。



その後も、タイを含め、いろんな国の人と関わりたいという思いから、神田外語大学での日本語授業のサポートボランティアに挑戦したり、千葉市国際交流協会でのボランティアに参加したりしながら、国際的な繋がりを絶やさずにいた高木さんは、ひょんなきっかけから日本語学習支援ボランティアとして外国人クラスの授業を受け持つことになりました。
「やってみない?」の一言と、心強い後押しをもらって挑戦した初めての授業の日、自身も緊張する中、生徒がスムーズに授業を受けられるようにと考えたアイスブレイクトークが功を成し、授業は手応えのあるものになったそうです。
その時感じた達成感は、今も自分の糧になっていると話してくれました。

もともと「こだわりがあまりないタイプ」だという敏子さん。
物事を理屈よりも感覚で選び、その時々で“惹かれる方”だと思って選んだ道は、どれも素敵な縁が広がっていったと感じることが多いそうです。
一方で、相手を慮(おもんぱか)ることにこだわりすぎて選んだ選択や提案は、相手にとっても自分にとってもモヤモヤするものになってしまうことが多い気がしていました。相手を思う第一歩として、自分自身もその選択や提案にワクワクし、自信を持つことが道を開く鍵なのかもしれないと、高木さんは思いました。
コロナウイルスの蔓延により、多くの飲食店やサービス業が閉業の危機に瀕していた時期、プラトーンもコロナ禍で大変な思いをしているのではないかと、ふと心配になった高木さんは電話をかけてみました。
すると、プラトーンは、世の中の需要をいち早く察知し、タイ食材や調味料などを全国に届けるネットショップ中心の業務形態へと切り替えることにより、かつてないほどの繁忙期を迎えていました。
「手伝ってほしい」とオーナーに頼まれ、再びプラトーンで働くことになった高木さん。
仕事内容は、全国各地に住むタイ人やタイ食材を必要とする顧客から受けた注文商品の宛名の打ち込みや発送に関わる仕事です。日本国内での運送には必須の日本語入力をスピーディーに行える高木さんは、この繁忙期のプラトーンにとって、必要戦力でした。
何気なく思い立ったようにかけた一本の電話がきっかけとなり、その後、高木さんはプラトーン初の日本人の正社員として働くことになりました。
市原市に住むタイ人の人口は、推計で約230〜240人。
外国人全体の数は約5,000人と県内でも多い地域ですが、意外にもタイ人は少数です。
そんな中でタイ人と関わり続けてきた高木さんは、タイ人が日本で直面する現実的な悩みも耳にしてきました。
「特定技能実習生として来た人たちは、手続きが本当に大変だと聞きます。」
その大変さから、手続きを仲介してくれる業者がいるというのですが、そのマージンはとても高額だといいます。母国の家族と離れ、家族のために働きに来たはずの外国人が、正しい情報を得られずに足元を見られてしまったり、不当な扱いを受けてしまうこともあると聞き、寂しい気持ちになる一方で、外国人を受け入れる企業などが抱える様々な問題も軽視してはならないと、高木さんは考えています。
「価値観の違いを理解し、日本に来る外国人が日本の文化や基本的なルールを正しく学習できる場所、わからないことはすぐに解決できるような仕組みを市原で作っていければと思っています。」
相手のことを理解するのは、どちらか一方だけが成しても意味がないことです。
「わかる」「理解する」といった言葉を、タイ語で “เข้าใจ(カオヂャイ)” と言います。
カオは「入る」、ヂャイは「心」。相手を理解するということは、相手の心に入ること。そんな素敵な成り立ちの言葉を使うタイ人と、お互いに心に入り合い、本当の理解と共に、より住みやすい市原市を双方で目指していきたい。そう思いながら、高木さんは今日もタイ料理レストラン「プラトーン」で仲間たちと働いています。
市原市はどこかタイを感じる瞬間がある街だと高木さんは言います。
「空が広くて、場所もゆったりしていて。環境がすごくいい」
広がる田んぼ、広い道路、どこかタイの地方都市を思い出すような風景が好きだそうです。
仕事が休みの日には古市場のベイシアやユニモで買い物をし、最近はウォーキングも兼ねてよく足を運ぶのは、パンが大好きな高木さんのお気に入りのパン屋「TETSU」。そこの明太フランスパンがイチオシだそうです。
「おおみやパンカフェ」を紹介する時の高木さんは、「裏庭のテラスから見える風景がタイそのものなんです!絶対行ってみてください!」と、キラキラした笑顔がとても印象的でした。
日常の中に、ちょっとした楽しみがたくさんある街だと語ってくれました。
今後の目標は、タイ語検定3級の取得です。
もっとスムーズに会話ができるようになって、身近なタイ人をもっと理解したいと考えているそうです。
一人でどこかにいく勇気が持てなかった高木さんでしたが、最近は一人カフェも映画も、最近やっとできるようになったと言います。
「次は一人旅にも挑戦したいですね」
最後に、これから移住を考えている人へ、こう語ってくれました。
「市原で一番おすすめの場所ですか?もちろんプラトーンですよ!!」
迷わずそう言った高木さん。
「タイが好きな人は、ぜひプラトーンに来てください。トムヤムラーメンも、お店こだわりのルークチン(タイの肉団子)も本当に美味しいですよ!!」
直感を信じ、縁を大切にしながら歩んできた敏子さん。あの日、現地の人たちのおかげでタイを好きになったように、自分もそんなきっかけを与えられる人になりたい。そんなことを思いながら、一緒に働く仲間や市原に住む外国人と住みやすい街を目指します。
市原市は、いろんな可能性を広げてくれる街です。市原でタイを感じたい人は、ぜひ、プラトーンへ!
